根附海龍選手の得意技はヒールフリップです。父から教わった基本技を、本人が世界で勝負できる複合トリックへ進化させました。
代表技は「ヒールフリップ・バックサイド・テールスライド・ビッグスピンアウト」。2025年11月30日のWST北九州でも成功させ、169.78点で準優勝しています。
※本記事は、2024年5月19日公開の『めざましmedia』による本人取材、World Skateとオリンピック公式メディアの大会記録を基に、2026年8月15日時点の情報を整理しています。
根附海龍の得意技は何?先に要点を紹介
根附海龍選手の得意技について、最初に押さえておきたいポイントは次の3つです。
- 原点:幼い頃に父からヒールフリップを教わった
- 代表的な複合技:ヒールフリップ・バックサイド・テールスライド・ビッグスピンアウト
- 主な実績:2024年WSTドバイ優勝、2025年X Games大阪優勝、同年WST北九州準優勝
パリ2024オリンピックへの出場は逃しましたが、これは根附選手の競技力が世界水準に届かなかったという意味ではありません。
日本男子ストリートは、堀米雄斗選手、白井空良選手、小野寺吟雲選手らが限られた代表枠を争う非常に厳しい状況でした。根附選手も五輪予選大会で優勝し、決勝で90点台のベストトリックを連発した世界トップクラスの選手です。
注目したいのは、ただヒールフリップが上手なだけではないこと。
ヒールフリップを入り口に、スライドや回転を重ねた複雑な技へ発展させ、自分の滑りだと分かる個性を作っているのです。
根附海龍は父からヒールフリップをどう教わった?
根附海龍選手がヒールフリップを覚えたきっかけは、幼い頃に父と一緒にスケートボードをしていたことです。
2024年5月19日に『めざましmedia』で公開された「メダルへの道」の取材では、父がヒールフリップを回せたため、その方法を教えてもらったと本人が説明しています。
ここで正確に区別しておきたいのは、父から教わったのはヒールフリップの原点であり、現在の複雑な大技を完成形のまま伝授されたわけではないということです。
同じ取材では、根附選手がスケートボードを始めた頃から、コーチを付けずに一人で何度も練習し、ヒールフリップを磨いてきたとも紹介されました。
したがって、「コーチなし」という情報は筆者の推測ではありません。少なくとも、同取材で振り返られたヒールフリップ習得期について確認できる内容です。
ただし、現在に至るまで常に誰からも助言を受けていない、という意味に広げて断定することはできません。大会では日本のコーチングスタッフも選手を支えており、幼少期の練習環境と現在の競技体制は分けて考える必要があります。
父が開けてくれた小さな扉の先を、自分で何度も滑りながら進んできた――。そう表現すると、根附選手の歩みが分かりやすいかもしれませんね。
ヒールフリップとはどんな技?
ヒールフリップは、ジャンプしながら前足のかかと側を抜くように使い、デッキの長辺方向の軸を中心にボードを一回転させる技です。
回転したボードを空中で両足の下へ捉え、姿勢を整えて着地します。
よく似た名前として知られているのが、キックフリップです。
- キックフリップ:主につま先側を使ってボードを回す
- ヒールフリップ:主にかかと側を使い、キックフリップとは逆方向へ回す
- 共通する難しさ:ボードの弾き、足の抜き方、跳ぶ高さ、回転速度、着地位置を合わせる必要がある
『めざましmedia』の取材で根附選手は、つま先で蹴るキックフリップに比べ、かかとを使うヒールフリップは細かな動きを把握しにくく、感覚が難しいという趣旨の説明をしています。
初心者から見ると、板がくるりと回って足元へ戻る一瞬の出来事ですよね。しかし、その一瞬にはいくつもの動作が重なっています。
回転が足りなければデッキの上へ乗れません。強く送り出しすぎれば、ボードが身体から離れてしまいます。
さらに競技では、平らな地面で回すだけではありません。階段や手すり、縁石状の障害物へ進入しながら回転させ、別の動作へつなぐため、求められる精度は一段と高くなります。
根附海龍がヒールフリップを大切にする理由
根附選手は同じ取材で、ヒールフリップを使う選手が多くないことや、自分だけのオリジナリティーを持ちたいことから、この技を大切にしていると語っています。
これは単なる「珍しい技が好き」という話ではないでしょう。
世界大会には、同じ障害物へ非常によく似た系統の技を仕掛ける選手も集まります。その中で回転方向や入り方が異なるヒール系の技を高い完成度で成功させれば、根附選手ならではの滑りとして印象に残ります。
もっとも、珍しければ自動的に高得点になるわけではありません。
World Skateのジャッジ基準では、技の難度、スピード、高さ、障害物の使い方、構成、完成度などを含めて演技が評価されます。個性的な技も、競技の中で着地して初めて結果へつながるのです。
私は、ここに根附選手の魅力があると感じます。
人と違うことだけを目的にするのではなく、幼い頃から身体になじませてきたヒールフリップを、自分らしさと得点力の両方を備えた武器へ育てているのですね。
ヒールバックテールビッグスピンアウトとは?
根附海龍選手を象徴する大技の一つが、ヒールフリップ・バックサイド・テールスライド・ビッグスピンアウトです。
『めざましmedia』では、「ヒールバックテールビッグスピンアウト」という短い呼び方でも紹介されました。
技名がまるで長い呪文のように見えて、難しそうだと感じる方もいるでしょう。動きを分けると、おおよその構造を理解できます。
- ヒールフリップでボードを回しながら障害物へ入る
- ボード後方のテール部分を障害物へかける
- バックサイド方向のテールスライドにつなぐ
- 障害物から出るときにビッグスピンの回転を加える
- ボードを足元へ収め、着地する
簡単にいえば、板を回して障害物へ乗り、後ろ側で滑り、さらに回転を加えて降りる複合技です。
なお、スケートボードの技名は、選手のスタンス、進入方向、身体とボードの回転方向によって細かく変わります。本記事では、番組とWorld Skateの大会レポートで使われた名称を基準にしています。
この技では、最初のヒールフリップが少しずれただけでも、ボードのテールを狙った位置へ合わせられません。
障害物へ入れたとしても、スライド中に姿勢を崩したり、出口の回転が不足したりすれば着地できません。複数の難しい動きを、一つの流れとして途切れさせずに成立させる必要があります。
根附選手は2024年の取材時、この技をほかの選手が行っているところを見たことがないという趣旨で説明していました。
大切なのは、その大技がテレビで紹介されただけの構想では終わらなかったことです。翌2025年、国際大会の決勝で実際に成功させています。
WST北九州2025で大技を成功
WST北九州ワールドカップは、2025年11月26日から30日まで福岡県北九州市の北九州メッセで開催されました。
11月30日の男子決勝で、根附選手はラン終了時点の首位に立ち、ベストトリックではヒールフリップ・バックサイド・テールスライド・ビッグスピンアウトを成功させました。
最終成績は次のとおりです。
順位 選手 国 最終得点
1位 白井空良 日本 170.27点
2位 根附海龍 日本 169.78点
3位 青木勇貴斗 日本 165.91点
根附選手と白井選手の差は、わずか0.49点でした。
World Skateの公式決勝レポートによると、根附選手は最後のベストトリックまで首位を守っていました。しかし白井選手が最終試技で大技を決め、逆転優勝しています。
公式結果で確認できる根附選手の最終得点は169.78点です。一方、公開されたテキスト版の公式レポートでは、ヒールバックテールビッグスピンアウト単独の採点は明記されていません。
そのため、この記事では大技そのものの点数を推定せず、確認できる最終得点と順位だけを記載しています。
この準優勝が印象深いのは、2024年に「自分らしさを示す技」として紹介された複合トリックが、約1年半後に国際大会の優勝争いで成功したからです。
しかも、わずか0.49点差の2位。父に教わったヒールフリップが、世界大会の最終局面を動かす技へ成長したことが数字からも伝わってきます。
根附海龍の得意技は大会でどう得点につながった?
根附海龍選手のヒール系トリックは、見栄えを良くする飾りではありません。主要大会の記録を見ると、ランとベストトリックの双方で上位争いを支えてきたことが分かります。
ただし、2024年のパリ五輪予選期と2025年のWSTでは、得点形式や採用されるスコアの構成が同一ではありません。
したがって、263.74点と169.78点を単純に並べて「点数が下がった」と判断することはできません。大会ごとのルールを踏まえ、順位や演技内容と一緒に見ることが大切です。
2023年東京世界選手権で準優勝
「WSTストリート世界選手権東京2023」は、2023年12月10日から17日まで東京・有明コロシアムで開催されました。
男子は白井空良選手が優勝し、根附海龍選手が2位、堀米雄斗選手が3位。日本勢が表彰台を独占しています。
根附選手は決勝のランで86.97点を記録し、ラン単体では決勝出場者の最高得点を獲得しました。
ベストトリックでは、ヒールフリップからバックサイド・ノーズブラントスライドへ入る技を成功。World Skateは、大会で初めて披露された組み合わせとして紹介しています。
この大会から見えるのは、根附選手が一発の大技だけに依存していないことです。
45秒間に複数の技をまとめるランで最高評価を得たうえで、ベストトリックでは独自性の高いヒール系の技を見せました。構成力と個性を同じ決勝で示した準優勝だったのです。
2024年ドバイ大会は0.04点差で優勝
2024年3月10日に決勝が行われたWSTドバイ・ストリートで、根附選手は263.74点を獲得し、WST初優勝を果たしました。
2位のグスタボ・リベイロ選手は263.70点。優勝を分けた差は、わずか0.04点です。
3位は白井空良選手の261.19点、4位は小野寺吟雲選手の241.77点でした。
World Skateの大会レポートでは、根附選手が重要な場面でノーリー・インワードヒールフリップ・フロントサイドボードスライドを成功させたことが伝えられています。
0.04点差の決勝では、一つの着地の乱れも順位を左右しかねません。
その緊張感の中でヒール系の複合技を決めた結果は、得意技が本番の得点源として機能した具体例といえるでしょう。
OQSブダペストでは大技とランの明暗が分かれた
根附選手は2024年5月のOQS上海大会で、予選ラン90.41点を記録して首位通過しましたが、決勝は8位でした。
続く最終戦のOQSブダペストでは、準決勝を268.00点の5位で通過。2024年6月23日の決勝では254.72点で7位となりました。
決勝の内訳を見ると、ランは53.94点と69.31点。一方、ベストトリックでは93.12点、92.29点、92.24点という3本の90点台を記録しています。
当時の合計点には、最高ラン一つとベストトリック上位二つが採用されました。そのため、合計254.72点は次の計算になります。
69.31点+93.12点+92.29点=254.72点
この数字は、根附選手の大技が世界最高水準の評価を受けた一方、ランの得点が総合順位へ影響したことを示しています。
パリ五輪の男子ストリート日本代表には、堀米雄斗選手、小野寺吟雲選手、白井空良選手が選ばれ、根附選手は出場できませんでした。
しかし、90点台のベストトリックを3本そろえた事実まで見れば、「五輪に出られなかったから大技が通用しなかった」という評価は当たりません。
むしろ、一発の技だけでは決まらないストリート競技の厳しさが、はっきり表れた大会だったと考えられます。
2025年はX Games大阪優勝とWST北九州準優勝
パリ五輪後の2025年6月20日から22日には、京セラドーム大阪でX Games大阪大会が開催されました。
根附選手は男子スケートボード・ストリートで金メダルを獲得。五輪代表を逃した後も、世界の強豪が集まる舞台で大きな結果を残しました。
さらに11月のWST北九州では169.78点で準優勝し、世界ランキングを8位から4位へ上げたとWorld Skateが報じています。
ここは「五輪落選後に競技力が伸びた」と原因まで断定するより、五輪後も国際大会で優勝と準優勝という好成績を残したと捉えるのが正確でしょう。
日本代表の3枠へ入れなかったことと、世界大会で優勝できる実力を持つことは矛盾しません。それほど日本男子ストリートの選手層が厚いのです。
根附海龍の強さは独創性と試合での再現性
私見では、根附海龍選手の強みは、ヒールフリップの珍しさだけではありません。
独自性の高いヒール系トリックを、国際大会の決勝で得点へ変えてきたことが、根附選手の本当の強さだと考えます。
2023年東京世界選手権では、ヒールフリップからバックサイド・ノーズブラントスライドへつなぐ技を成功させました。
2024年ドバイでは、ノーリー・インワードヒールフリップ・フロントサイドボードスライドを決め、0.04点差の優勝をつかんでいます。
2025年北九州では、ヒールフリップ・バックサイド・テールスライド・ビッグスピンアウトを成功させ、優勝者と0.49点差の準優勝でした。
この3大会を並べると、同じヒールフリップを繰り返しているのではないことが分かります。
障害物への入り方やスライドの種類、出口の回転を変えながら、それぞれ異なる複合技として披露しています。得意な技を一つ持つだけでなく、その技を軸に表現の幅を広げているのですね。
一方で、2024年OQSブダペストの結果が示したように、ベストトリックの得点力だけで常に上位へ入れるわけではありません。
ランでミスが続けば、大技を何本も決めて挽回しなければならなくなります。反対に、2023年東京や2025年北九州のようにランで高い評価を得られれば、得意のベストトリックをより有利な状況で迎えられます。
私は、根附選手の今後を見るうえで、「新しい大技を増やせるか」だけに注目する必要はないと考えています。
すでにヒール系の技には、世界大会の公式レポートで特筆されるほどの個性があります。その武器をランの完成度と結びつけ、異なるコースでも安定して得点へ変えられるかが大切になるでしょう。
2025年北九州では、ラン終了時に首位へ立ち、ベストトリックでも代名詞の大技を成功させました。
最終試技で白井選手に逆転されたものの、これは根附選手が理想に近い勝負をしていた証拠でもあります。世界の決勝では、会心の演技をしても最後の最後に順位が変わるのですね。
父と楽しんだスケートボードから始まり、一人で繰り返した練習を経て、ヒールフリップは根附海龍という選手を表す技になりました。
親心で見守っていると、父に教わった一つの動きが、世界の観客を沸かせる大技へ育った時間そのものに胸が温かくなります。
まとめ
根附海龍選手の得意技は、かかと側を使ってボードを回転させるヒールフリップです。
幼い頃に基本を教えたのは父ですが、競技で使用する高難度の複合トリックまで発展させたのは根附選手本人です。2024年の本人取材では、習得期にコーチを付けず、一人で繰り返し練習したことも紹介されています。
代表技は、ヒールフリップ・バックサイド・テールスライド・ビッグスピンアウト。2025年11月30日のWST北九州決勝で成功させ、169.78点で準優勝しました。
根附選手は2023年東京世界選手権で準優勝、2024年WSTドバイで263.74点を記録して優勝。パリ五輪には出場できませんでしたが、2025年にはX Games大阪で優勝しています。
ヒールフリップの魅力は、珍しさだけではありません。個性的な技をランの構成力や着地の完成度と結びつけ、国際大会の得点へ変えられることが根附選手の強みです。
父から教わった技の原点を、自分にしか表現できない世界級のスタイルへ育てた根附海龍選手。これからどのようなヒール系トリックを見せてくれるのか、楽しみに応援したいですね。
よくある質問
根附海龍の得意技は何ですか?
得意技はヒールフリップです。前足のかかと側を使ってボードを回転させる技で、根附選手はスライドや回転を加えた高難度の複合トリックへ発展させています。
根附海龍のヒールフリップは父直伝ですか?
基本のヒールフリップは、幼い頃に父から教わったと本人が説明しています。ただし、世界大会で使用する複雑な技は、根附選手自身が繰り返し練習して作り上げたものです。
根附海龍はパリ五輪に出場しましたか?
パリ2024オリンピックには出場していません。日本代表には堀米雄斗選手、小野寺吟雲選手、白井空良選手が選ばれました。その後、根附選手は2025年X Games大阪で優勝し、WST北九州で準優勝しています。
筆者プロフィール
ひたむきに頑張る若者たちの姿を親心で見守り、その魅力を温かい言葉で丁寧にお伝えします。
春野滋(エンタメ&スポーツ愛好家ライター)

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