2024年の報道では、安楽宙斗選手のリーチは180cm。身長168cmとの差は12cmで、脱力と全身の連動によって長さを強さへ変えています。
ただし、身長とリーチはいずれも2024年当時に伝えられた数値であり、2026年現在の公式測定値とは限りません。この記事では表記の違いも整理しながら、競技でリーチがどう生かされているのかを見ていきます。
安楽宙斗のリーチは何cm?2024年の報道では180cm
安楽宙斗選手のリーチは、2024年の報道で180cmと紹介されています。身長168cmとの差を計算すると、プラス12cmです。
リーチとは、両腕を左右へ水平に広げたときの、片方の指先から反対側の指先までの長さです。クライミングでは「ウイングスパン」と呼ばれることもあります。
確認できる数値を整理すると、次の通りです。
- 身長:168cm
- リーチ:180cm
- 身長との差:プラス12cm
- リーチ÷身長:約1.07
つまり、報道値に基づけば、安楽選手のリーチは身長の約107%に当たります。
文春オンラインが2024年8月23日に公開した記事では、安楽選手について「身長168cmながら両腕を広げると180cm」と紹介されました。
一方、TBSテレビが2024年1月11日に放送・配信した特集では、「身長を10cm上回る」リーチが特徴として挙げられています。
「12cm差なのか、10cm差なのか」と迷ってしまいますよね。
身長168cmとリーチ180cmという掲載数値から計算した差は12cmです。ただし、TBSテレビが「10cm」と表現した理由は明らかにされていません。
概数として表現した可能性のほか、取材時期や測定方法が異なった可能性も考えられますが、いずれも公表された説明ではありません。したがって、推測で理由を一つに決めつけることはできません。
現時点では、2024年の具体的な報道値は身長168cm・リーチ180cmで、その差は計算上12cm。別の報道では「10cm上回る」と表現されたと整理するのが正確でしょう。
なお、リーチ180cmは片腕だけの長さではありません。左右へ広げた両腕の指先から指先までを測った全長です。
安楽選手は2006年11月14日生まれで、2024年8月のパリ五輪当時は17歳でした。成長期に取材された数値であることから、その後に身長やリーチが変化している可能性もあります。
そのため、180cmを2026年現在の確定値として扱うのではなく、パリ五輪前後の安楽選手について報じられた目安として受け取ることが大切です。
リーチ180cmはクライミングでどう役立つ?
安楽宙斗選手の長いリーチは、単に遠くへ手が届くというだけではありません。課題に対して選べる動きを増やせる点に、大きな価値があります。
競技用の壁に取り付けられた突起を「ホールド」といいます。選手はホールドを手で保持したり、足場として利用したりしながら指定された課題を登ります。
リーチが長い選手は、ホールド同士の間隔が広い場面で有利になることがあります。ただし、壁の傾斜や足場の位置、ホールドの向きによって条件が変わるため、長ければ必ず勝てるというものではありません。
安楽選手の場合、主に次の3点でリーチが役立っていると考えられます。
遠いホールドへの選択肢が増える
次のホールドが遠い場合、選手は足で壁を強く蹴ったり、身体を振った勢いを使ったりして距離を補います。
一方、腕の長さに余裕があれば、大きく跳ばず、足場を残したまま手を伸ばせる場合があります。静かに取りに行く方法と、勢いをつけて飛びつく方法を使い分けやすくなるのです。
もちろん、競技ではジャンプする動きそのものを要求する課題もあります。そのような場面では、腕の長さだけで動きを省略することはできません。
それでも、複数の攻略法を検討できることは大きな強みです。リーチは正解を自動的に与えるものではなく、正解の候補を増やす身体的な条件と考えると分かりやすいでしょう。
足を動かす順番に余裕を持ちやすい
クライミングでは、手と同じくらい足の位置が重要です。
手が次のホールドへ届かなければ、先に足を高く上げて身体全体を押し上げる必要があります。しかし、足場が小さかったり滑りやすかったりすると、姿勢を変える途中でバランスを崩すこともあります。
リーチに余裕がある選手は、課題の配置によっては、安定している足場を残したまま先に手を出せます。ホールドを確保してから足を移すという順番を選べるわけです。
ただし、安楽選手の全試技で足数が少なくなるという意味ではありません。実際の有利・不利は課題ごとに変わります。
大切なのは、手を先に出すのか、足を先に上げるのかという選択肢を持てること。難しい課題ほど、この小さな余裕が攻略の組み立てに関わってきます。
ボルダーとリードで異なる使い方ができる
ボルダーは、比較的低い壁に設定された少数の難しい動きを、制限時間内に攻略する種目です。
ホールドへ飛びつく動き、身体を横へ振る動き、わずかな足場でバランスを保つ動きなど、課題ごとに異なる能力が試されます。
ボルダーでは、安楽選手のリーチは攻略手順を増やす方向に働きます。中間のホールドを使って進む方法だけでなく、配置によっては一つ先を直接狙えるからです。
一方のリードは、高い壁に設定された長いルートを一度の試技で登り、到達した高さを競います。登る時間が長いため、技術に加えて体力の配分も欠かせません。
リードでは、リーチに余裕があることで、強く身体を引き上げずに次のホールドを狙える場面が生まれると考えられます。ただし、省エネルギーにつながるかどうかは、足の位置や姿勢、保持の安定性を含む総合的な身体操作次第です。
つまり、同じ180cmというリーチでも、ボルダーでは「攻略法を増やす長さ」、リードでは「効率のよい姿勢を探すための長さ」として働く可能性があります。
「脱力登り」が安楽宙斗のリーチを強さへ変える
安楽宙斗選手の特徴は、長い腕だけではなく、保持に必要な力と余計な緊張を分けられる「脱力登り」にあります。
2023年11月23日にテレビ朝日「報道ステーション」で放送された特集では、安楽選手自身が、必要以上に力を使わない登りを「脱力登り」と表現しました。
もちろん、まったく力を入れずに登っているわけではありません。必要な瞬間と部位には力を使い、それ以外を過度に固めないという意味です。
同特集で田中星司コーチは、安楽選手について、指先に力を入れながら腕全体を脱力できると解説しています。
小さなホールドを落とすまいと意識すると、指だけでなく腕や肩まで力みやすいものですよね。身体全体が固くなれば、次の動作へ滑らかに移りにくくなります。
安楽選手はホールドを保持する指には必要な力を使いながら、腕全体には余計な緊張を残しにくいと田中コーチは見ています。この専門家の説明からも、リーチの数値だけでは安楽選手の強さを説明し切れないことが分かります。
肩・胸・股関節を連動させている
田中コーチは同じ特集で、安楽選手が肩、胸、股関節を使って身体を振り、円運動を上方向への力につなげていると説明しました。
ここが、180cmというリーチを競技で生かす重要なポイントです。
遠いホールドに向かって腕だけを伸ばしても、身体が壁から離れたり、ホールドをつかんだ後の姿勢が安定しなかったりすれば、次の動作にはつながりません。
安楽選手は、田中コーチの解説によれば、肩だけではなく胸や股関節まで使って上向きの動きを生み出しています。指先へ向かう動作を、全身で準備しているのですね。
ここでは、報道された180cmを「計測上のリーチ」、実際の壁で発揮される到達範囲を「使えるリーチ」と分けると理解しやすくなります。
後者は正式な競技用語として数値化されたものではなく、安楽選手の特徴を説明するための本記事での整理です。足の位置や身体の向きまで含め、壁の上で長さをどこまで生かせるかという意味で使っています。
安楽選手は、長い腕を単独で動かすのではなく、田中コーチが挙げた肩、胸、股関節の動きと結びつけています。だからこそ、実際の試技では数字以上に軽やかに手が伸びているように見えるのでしょう。

長い腕を折りたたむ技術も必要
リーチが長いことは、すべての課題で有利になるわけではありません。
身体の近くにホールドが集まっている場面では、肘を曲げて腕を小さく収める必要があります。壁と身体の間隔が狭ければ、長い腕がかえって窮屈になる場合もあるでしょう。
また、遠くのホールドに届いても、正しい方向へ力をかけられなければ保持できません。足場が外れれば、つかんだ直後に身体が大きく振られることもあります。
安楽選手がボルダーとリードの両方で世界的な成績を残している事実は、遠くへ伸びる動きだけでなく、狭い姿勢や複雑な重心移動にも対応してきたことを示しています。
長い腕を伸ばせることと、必要なときに折りたためること。この両方があってこそ、リーチは幅広い課題で役立つ武器になるのです。
2023年年間2冠とパリ五輪銀メダルが示す総合力
安楽宙斗選手は2023年、男子ワールドカップのボルダーとリードで、それぞれ年間王者になりました。
国際競技団体のWorld Climbing(旧IFSC)の記録でも、2023年に両種目のシリーズタイトルを獲得したことが確認されています。
動きの難度と攻略力が問われるボルダー、長いルートで持久力と効率が問われるリード。その両方で年間タイトルを獲得したことは、安楽選手がリーチだけに依存する選手ではないと示す結果です。
腕の長さだけですべての課題を解決できるのであれば、種目ごとに登り方を変える必要はありません。しかし実際には、ボルダーとリードでは試技時間、壁の高さ、得点方法、求められる体力配分が異なります。
安楽選手は、異なる条件の中でリーチ、脱力、重心移動を使い分けたからこそ、二つの年間タイトルへ到達できたと考えられます。
2024年8月9日に日本男子初の五輪表彰台
2024年8月9日、安楽選手はパリ五輪の男子ボルダー&リード複合決勝で銀メダルを獲得しました。
金メダルはイギリスのトビー・ロバーツ選手、銅メダルはオーストリアのヤコブ・シューベルト選手でした。安楽選手はスポーツクライミングの日本男子として初めて五輪の表彰台に立っています。
決勝のボルダーでは、第1課題と第2課題を完登。一方、第3課題と第4課題では最終ホールドを保持できず、完登には届きませんでした。
その後のリードを含めて銀メダルを獲得したことは、17歳だった安楽選手が世界最高峰の舞台で総合力を発揮した証しでしょう。
ただし、五輪決勝からも分かるように、リーチが長ければすべてのホールドを取れるわけではありません。課題を読む判断、制限時間の使い方、ホールドを保持する技術、大舞台で普段の動きを再現する力まで求められます。
文春オンラインの2024年8月23日付記事では、安楽選手と同世代の通谷律選手が、第4課題について、序盤に時間を使ったことでゴールを再度狙う機会が限られた可能性を指摘しました。
また、小俣史温選手は同記事で、リードの序盤から安楽選手の動きが普段より硬く見えたと振り返っています。その背景として、直前に登ったトビー・ロバーツ選手への大歓声が心理に影響した可能性にも触れました。
これらは同世代選手による試技への見方であり、安楽選手本人が原因を断定したものではありません。それでも、リーチを生かすには、身体を伸ばせる状態だけでなく、普段に近い滑らかな動きを大舞台で再現することも重要だと気づかされます。
パリ五輪は、長いリーチが通用しなかった大会ではありません。むしろ、17歳で銀メダルを獲得するほどの武器になった一方、世界一を争う段階では身体的な特徴だけで決着しないことも示した大会だったのです。
安楽宙斗の強さをどう見る?リーチより注目したい一手前
筆者としては、安楽宙斗選手の強さを「リーチが180cmあるから遠くへ届く」とだけ説明するのは、少しもったいないと感じます。
注目したいのは、ホールドへ手が届いた瞬間ではなく、その一手前にどのような準備をしているかです。
田中星司コーチの解説によれば、安楽選手は指先に力を入れても腕全体を脱力でき、肩、胸、股関節の動きを上方向への力につなげています。
この説明に沿って試技を見ると、最後に腕を伸ばす動作だけが独立しているのではなく、それ以前の足運びや身体の向きが一手の土台になっていることが分かります。
リーチ180cmは生まれ持った身体的な特徴です。しかし、その長さをどの角度で使うか、静かに伸びるか勢いをつけるか、ホールドを取った後にどの姿勢へ移るかは、技術と判断によって変わります。
私は、安楽選手にとってリーチは「勝利を約束する近道」ではなく、課題ごとに使い方を変えられる道具なのだと考えています。
ボルダーでは、一つ先を狙う選択肢として使える場面があります。リードでは、長いルートの中で無理の少ない姿勢を探す材料になるかもしれません。
反対に、狭い場所では長い腕を折りたたみ、跳ぶことを求められる課題では思い切って身体を動かす必要があります。伸びるだけでなく、課題に合わせて長さを制御できる点が重要です。
2023年の男子ワールドカップ年間2冠と、2024年パリ五輪の銀メダルは、その対応力が世界の舞台で通用していることを示しています。
今後の試合を見るときは、指先だけを追うのではなく、次のホールドへ向かう直前の足にも注目してみてください。
どちらの足に体重を乗せたのか。腰をどちらへ向けたのか。肩を動かす前に胸や股関節がどう変化したのか。
こうした準備を見てから最後の一手を眺めると、安楽選手の登りがなぜ軽やかに見えるのか、より具体的に感じられるのではないかしら。
また、2024年当時は17歳でしたから、身体の成長や競技経験によって登り方が変化していく可能性もあります。今後は最新の公式プロフィールや大会資料が公表された際に、身長とリーチの数値も改めて確認する必要があります。
古い報道値を現在の事実として固定せず、変化も含めて見守ること。それが、成長期から世界で戦う若い選手を正確に伝えるうえで大切だと私は考えています。
まとめ
安楽宙斗選手のリーチは、2024年の報道で180cmと紹介されています。同じ報道にある身長168cmとの差を計算すると、プラス12cmです。
一方、TBSテレビの2024年1月11日放送・配信の特集では「身長を10cm上回る」と表現されました。12cmと10cmの表記が異なる理由は公表されておらず、概数なのか、測定時期や方法の違いなのかは断定できません。
また、身長168cmとリーチ180cmは、2026年現在の公式測定値ではなく、パリ五輪前後に伝えられた報道値です。
安楽選手の強さは、180cmという数字だけで決まるものではありません。田中星司コーチは、指先に力を入れながら腕全体を脱力できることや、肩、胸、股関節を使って上向きの力を生み出していることを特徴として挙げています。
長い腕を伸ばすだけでなく、足から上半身までを連動させ、課題に応じて動きを選べること。それが、リーチを実際の競技力へ変えているのでしょう。
安楽選手は2023年に男子ワールドカップのボルダーとリードで年間王者となり、2024年8月9日のパリ五輪では男子複合の銀メダルを獲得しました。
これから試合を見る際は、ホールドに届いた指先だけでなく、一手前の足運びや腰、胸、肩の動きにも目を向けてみてください。180cmという報道値の奥にある、安楽選手の繊細な身体操作が見えてくるはずです。
よくある質問
安楽宙斗選手のリーチは何cmですか?
2024年の報道では180cmと紹介されています。ただし、これは2026年現在の公式測定値ではなく、パリ五輪前後に伝えられた数値です。
安楽宙斗選手の身長とリーチの差は何cmですか?
報道された身長168cmとリーチ180cmから計算すると12cmです。TBSテレビでは「身長を10cm上回る」と表現されていますが、表記が異なる理由は明らかにされていません。
リーチが長ければクライミングで必ず有利ですか?
必ず有利とは限りません。遠いホールドを狙いやすい一方、狭い姿勢では腕を折りたたむ必要があります。足の位置、重心移動、保持力、課題を読む判断などと組み合わせて初めて、長いリーチを競技で生かせます。
筆者:春野滋(エンタメ&スポーツ愛好家ライター)


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