杉山慎さんの勤務先は北海道大学低温科学研究所で、教授と北極域研究センター長を兼任しています。
国際雪氷学会会長やArCS IIIの人材育成責任者も務める、氷河・氷床研究の第一人者です。
杉山慎の勤務先と現在の役職は?
杉山慎さんの主な勤務先は、北海道大学低温科学研究所です。2017年4月に教授へ就任し、2025年4月からは北海道大学北極域研究センター長も兼任しています。
2026年9月1日時点で確認できる主な所属と役職は、次のとおりです。
所属機関・団体 現在の役職・役割 就任時期・任期
北海道大学低温科学研究所 教授 2017年4月から
北海道大学北極域研究センター センター長 2025年4月から
北海道大学大学院環境科学院 雪氷・寒冷圏科学コースの教育担当 現在
国際雪氷学会(IGS) 会長 2024~2027年
北極域研究強化プロジェクト「ArCS III」 人材養成・人材育成プログラム実施責任者 プロジェクト期間中
最も簡潔に表すなら、杉山さんの現在の肩書は「北海道大学低温科学研究所教授・北海道大学北極域研究センター長」です。
大学院環境科学院については、低温科学研究所とは別の主たる勤務先があるという意味ではありません。低温科学研究所に所属しながら、大学院の雪氷・寒冷圏科学コースで学生の教育や研究指導も担当する関係です。
北海道大学低温科学研究所の組織情報では、杉山さんは共同研究推進部の研究プログラム「グリーンランド環境変動」を担当する教授として掲載されています。
ここでいう「共同研究推進部・教授」は、共同研究推進部の部長を意味するものではありません。同部でグリーンランド環境変動に関する研究を担う教授と捉えるのが正確です。
国際雪氷学会(International Glaciological Society、IGS)の公式Councilページには、杉山さんの会長任期が「2024–2027」と記されています。一部で見られる「2025年2月から」という起算日は、今回確認した公式情報からは裏づけられませんでした。
また、杉山さんは2025年の欧州地球科学連合(EGU)「Julia and Johannes Weertman Medal」受賞者ですが、受賞歴と委員職は別です。「EGUのメダル委員を務めている」という情報は確認できないため、現在の役職には含めていません。
肩書が多い研究者ほど、所属、兼任、学会役職、受賞歴が混同されがちです。それぞれを分けて見ると、杉山さんが北海道大学を研究と教育の拠点としながら、国内外の共同研究も率いる立場にあることが分かります。
北海道大学低温科学研究所では何を研究している?
杉山慎さんの専門は、雪氷学、氷河・氷床変動、氷河力学です。グリーンランド、南極、南米パタゴニアなどで、氷河が動く仕組みや、氷が海や湖へ失われていく過程を研究しています。
雪氷学とは、雪、氷河、氷床、海氷、凍土などを対象とする学問です。杉山さんの研究では、特に次の現象が重要なテーマとなっています。
- 氷河が自らの重みで変形し、地面の上を流れる仕組み
- 氷河底面の水が流動速度へ与える影響
- 海や湖に面した氷河末端から氷塊が分離する「カービング」
- 氷河融解水が沿岸海洋や生態系へ及ぼす影響
- 気温、降雨、潮汐などに応じて起こる氷河の変動
氷河は、静止した巨大な氷の塊ではありません。内部でゆっくり変形し、底面を滑りながら移動するため、氷の下にある水や地形も流動速度を左右します。
海や湖に接する末端では、氷塊が割れて水中へ落ちるカービングも起こります。海面上昇の見通しを考えるには、表面で解ける氷だけでなく、氷河がどれほど速く海へ流れ、末端から失われるのかを把握しなければなりません。
杉山さんの研究の大きな特徴は、人工衛星やドローンによる広域観測と、GPSや熱水掘削を使った現地観測を組み合わせている点です。
熱水掘削では、高温の水を噴射して数百メートルの厚さを持つ氷へ観測孔を作り、その穴に測定機器を入れます。これにより、人工衛星からは見えない氷河底面の水圧や温度などを調べられるのです。
人工衛星が「どこで、どのくらい氷が変化したか」を広く捉える一方、熱水掘削やGPSは「なぜ変化したのか」を現場から探ります。この役割分担が、杉山さんの研究を理解する重要なポイントでしょう。
北海道大学が2021年に公表した南極での研究では、熱水掘削によって氷河の下へ到達し、氷と海水が接する環境を直接観測しました。地上や衛星からは見えない氷床底部へ迫る取り組みです。
さらに北海道大学は2026年6月、南極の表面融解水が氷河底面まで流れ込み、底面の滑りを通じて氷河流動を加速させた現象を現地観測で確認したと発表しました。
ここでいう「初めて」は、南極氷床において、表面融解水の底面への流入と流動加速の関係を現地観測で捉えたという発表上の範囲です。南極に関するあらゆる現象を世界で初めて発見した、という意味ではありません。
この成果が重要なのは、気温上昇によって氷が解ける量だけでなく、融けた水が氷河の流れる速さまで変える可能性を示した点です。将来の海面上昇を見積もるモデルにも関係する、見過ごせない観測結果といえます。

北極域研究センター長として何をしている?
杉山慎さんは2025年4月から、北海道大学北極域研究センター長を務めています。センター長としての役割は、個人の氷河研究にとどまらず、大気、海洋、生態系、地域社会などを扱う研究者を結びつけることです。
北極域の環境変化は、氷だけを見ても全体像をつかめません。氷河から海へ流れ込む融解水は、水温や塩分、栄養物質の循環を変え、プランクトンや魚などの生態系にも影響を及ぼすためです。
北海道大学が2018年に発表したグリーンランドのフィヨルド研究では、氷河底面から海へ流れ出す融解水が深層の海水を巻き上げ、栄養塩を表層へ運ぶ「氷河ポンプ」の働きが報告されました。
2022年に北海道大学が公表した研究では、氷河融解の加速に伴い、海のプランクトン群集の構造が変化する可能性も示されています。
これらは、氷河の減少量だけで北極の変化を説明できないことを物語っています。氷河、海洋、生物を一続きの仕組みとして捉えるには、専門分野を越えた共同研究が必要なのです。
杉山さんは、国立極地研究所を代表機関として進められる北極域研究強化プロジェクト「ArCS III」にも参加しています。公式サイトで確認できる具体的な役割は、人材養成・人材育成プログラムの実施責任者です。
このプログラムでは、2032~2033年に予定される第5回国際極年「IPY-5」などで中心的に活躍できる若手研究者の育成が目標に掲げられています。
極地研究では、観測機器の扱い方だけを学べばよいわけではありません。厳しい環境での安全管理、国際チームでの意思疎通、長年蓄積されたデータの継承、現地住民との信頼関係も重要になります。
ArCS IIIの活動報告によると、2025年8月4日にはグリーンランド北西部のカナック村で地域住民向けワークショップが開催され、約50人が参加しました。杉山さんは、沿岸コミュニティーが直面する課題に関係した研究テーマを紹介しています。
北極は研究者にとって観測場所ですが、住民にとっては生活の場です。観測結果を現地へ返し、地域の知識や課題を研究へ取り込む姿勢は、北極域研究を長く続けるためにも欠かせません。
私は、杉山さんがセンター長を務める意味は、この「つなぐ仕事」にあると考えます。氷河底面の物理現象から生態系や地域社会まで、異なる縮尺の課題を一つの研究体制で扱うことが、北極の変化を正確に理解する近道になるからです。
杉山慎はどのような経歴で教授になった?
杉山慎さんは、民間企業の研究員、青年海外協力隊員、大学院生、海外研究員を経て、北海道大学低温科学研究所の教授になりました。
1969年3月に愛知県で生まれ、1993年に大阪大学大学院基礎工学研究科修士課程を修了。同年4月、信越化学工業の精密機能材料研究所へ入社しました。
MBS『情熱大陸』の公式プロフィールによると、信越化学工業ではガラスや半導体部品などに関わる先端デバイスの開発に従事していました。研究者としての出発点は大学ではなく、企業の研究所だったのですね。
その後の主な経歴は次のとおりです。
- 1993年4月~1997年8月:信越化学工業精密機能材料研究所・研究員
- 1997年9月~1999年12月:青年海外協力隊員としてザンビア共和国で理数科教師
- 2000年4月~2003年3月:北海道大学大学院地球環境科学研究科で博士号を取得
- 2003年4月~2005年9月:スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH)・研究員
- 2005年10月~2014年1月:北海道大学低温科学研究所・講師
- 2014年2月~2017年3月:同研究所・准教授
- 2017年4月~現在:同研究所・教授
- 2025年4月~現在:北海道大学北極域研究センター・センター長
氷河研究へ進むきっかけの一つは、山登りでした。物質研究で培った物理学の知識を生かせる研究対象として、氷河に関心を深めたと紹介されています。
企業経験やザンビアでの教育経験が、現在の極地観測や国際連携へ直接生かされていると本人が明言した一次資料は、今回確認した範囲では見当たりませんでした。
ただし、経歴から筆者は、装置を扱う企業研究と異文化の中で教えた経験が、杉山さんの現在の活動を考えるうえで無関係ではないと見ています。
極地観測では、低温、強風、不安定な足場、限られた電力や輸送条件の中で機器を動かさなければなりません。国籍や専門の異なる研究者と協働する場面も多く、装置への理解と意思疎通の両方が求められます。
もっとも、これは経歴と現在の仕事内容を照らし合わせた筆者の解釈です。本人の発言として扱うのではなく、異なる経験を積んだ研究者だからこそ持ち得る強みの一つとして見るのが適切でしょう。
『情熱大陸』出演と研究実績は?
杉山慎さんは、2026年9月6日午後11時10分から放送予定のMBS・TBS系『情熱大陸』に出演します。
番組公式サイトでは、夏のグリーンランドで実施した観測活動に密着すると予告されています。氷河に穴をあける作業、GPSマーカーを使った移動量の測定、ドローンによる精密測量などが紹介される予定です。
GPSマーカーの位置を継続的に測れば、氷河がどの方向へ、どれほどの速さで動いたかを求められます。ドローンの画像から立体的な地形モデルを作り、過去のデータと比較すれば、氷河表面の高度変化や末端の後退も調べられます。
番組予告では、杉山さんがグリーンランドで「異変」を見つけたと紹介されています。しかし、記事の基準日である2026年9月1日時点では、異変の具体的な内容や観測値は公表されていません。
氷河の後退、流動速度、亀裂、融解量などのうち、何を指しているのかを放送前に決めつけることはできません。観測された現象と、その原因についての科学的な結論も分けて考える必要があります。
一方、研究者としての実績はすでに国際的に評価されています。
杉山さんは2025年、欧州地球科学連合の雪氷・寒冷圏科学部門が授与する「Julia and Johannes Weertman Medal」を受賞しました。
EGUの受賞者紹介では、氷河力学と氷・水相互作用の研究、特に湖へ流れ込むカービング氷河や氷河湖決壊の理解への貢献が評価されています。
MBSの番組公式プロフィールは、杉山さんを同メダルの「欧米以外の研究者として初の受賞者」と紹介しています。この「初」は、同メダルの歴代受賞者における地域的な位置づけを示す番組側の説明であり、EGU全体のすべての賞を指すものではありません。
また、2021年に中公新書から刊行した『南極の氷に何が起きているのか―気候変動と氷床の科学』は、2022年に第38回講談社科学出版賞を受賞しました。
専門家向けの論文だけでなく、一般読者へ氷床変動の意味を説明してきた点にも注目したいところです。北極域研究センター長には、異なる分野の研究者をまとめる力に加え、研究の社会的な意味を伝える力も求められるからです。
杉山慎の現在と今後をどう見る?
杉山慎さんは、北海道大学低温科学研究所で現地観測を続ける研究者であると同時に、北極域研究センター長、国際雪氷学会会長、ArCS IIIの人材育成責任者でもあります。
私見では、今後の注目点は、現場観測と組織運営をどのように両立するかです。
役職が増えれば、会議、研究調整、国際連携、若手育成に使う時間も増えるでしょう。それでも氷河底面や末端へ迫る観測を継続できれば、現場で生まれた疑問を大規模な共同研究へつなげられます。
もう一つの重要な点は、長期観測です。氷河は気温だけで動くのではなく、降雪、降雨、融解水、海水温、潮汐、底面地形など複数の条件から影響を受けます。
ある年に大きな変化を観測しても、それだけでは一時的な現象か、長期的な傾向かを判断できません。同じ地域へ繰り返し足を運び、過去のデータと比較することで、気候変動による信号と年ごとの揺らぎを分けられます。
杉山さんの研究上の強みは、人工衛星で広域を捉えながら、熱水掘削によって氷の下へ直接迫ることです。北極域研究センター長として海洋、生態系、地域社会の研究も結びつけば、「氷がどれほど減るか」から「その変化が海や暮らしをどう変えるか」まで一続きで検討できます。
私は、華やかな受賞歴だけでなく、この異なる縮尺を行き来する力に杉山さんの研究者としての価値が表れていると感じます。
氷河底面の水圧という目に見えない現象を測りながら、北極域全体の将来や次世代研究者の育成まで見渡す。その広さこそ、現在の複数の役職を一つにつなぐ軸ではないでしょうか。
まとめ
杉山慎さんの主な勤務先は、北海道大学低温科学研究所です。2017年4月から教授を務め、2025年4月から北海道大学北極域研究センター長を兼任しています。
北海道大学大学院環境科学院では、雪氷・寒冷圏科学コースの教育や研究指導を担当しています。別の主たる勤務先ではなく、低温科学研究所に所属する教員として大学院教育にも携わる関係です。
国際雪氷学会では2024~2027年任期の会長を務め、ArCS IIIでは人材養成・人材育成プログラムの実施責任者を担っています。
専門は雪氷学と氷河・氷床変動です。グリーンランド、南極、パタゴニアなどで、人工衛星、GPS、ドローン、熱水掘削を組み合わせ、氷河が動く仕組みや海へ失われる過程を調べています。
企業研究員やザンビアでの理数科教師を経て氷河研究者となった杉山さん。現在は北海道大学を拠点に、現地観測、大学院教育、国際学会運営、若手育成を結ぶ役割を担っています。
参照した主な公式資料
記事中の肩書、年月、研究成果は、次の発表主体による公式情報を2026年9月1日に照合しました。
- 北海道大学低温科学研究所「組織・研究者紹介」:教授としての所属、共同研究推進部における担当、研究分野
- 北海道大学北極域研究センター「組織・メンバー」:センター長としての所属
- researchmap「杉山慎」:職歴、教授およびセンター長への就任時期
- 北海道大学大学院環境科学院「雪氷・寒冷圏科学コース」:大学院教育の担当
- 国際雪氷学会「IGS Council」:会長職と2024~2027年の任期
- ArCS III公式サイト「人材養成・人材育成」:プログラム実施責任者としての役割
- ArCS III活動報告(2025年8月のカナック村ワークショップ):開催地、実施内容、参加規模
- 北海道大学の研究発表(2018年):グリーンランドのフィヨルドにおける氷河ポンプの研究
- 北海道大学の研究発表(2021年):南極での熱水掘削と氷河底部の直接観測
- 北海道大学の研究発表(2022年):氷河融解とプランクトン群集に関する研究
- 北海道大学の研究発表(2026年6月):南極の表面融解水と氷河流動加速に関する現地観測
- 欧州地球科学連合「2025 Julia and Johannes Weertman Medal」受賞者紹介:受賞分野と評価理由
- 北海道大学の受賞紹介(2025年5月22日公開):同メダル受賞
- MBS『情熱大陸』杉山慎回の番組公式プロフィール・予告:放送予定、経歴、グリーンランドでの観測内容
- 講談社「第38回講談社科学出版賞」:著書の受賞歴
※放送予定や所属情報は変更される可能性があります。記事の基準日および最終確認日は2026年9月1日です。
よくある質問
杉山慎さんの現在の勤務先はどこですか?
北海道大学低温科学研究所です。2017年4月から教授を務めています。
杉山慎さんの現在の役職は何ですか?
北海道大学低温科学研究所教授と北海道大学北極域研究センター長を兼任しています。国際雪氷学会では、2024~2027年任期の会長です。
杉山慎さん出演の『情熱大陸』はいつ放送されますか?
MBS・TBS系で2026年9月6日午後11時10分から放送予定です。変更される可能性があるため、視聴前に番組公式情報をご確認ください。
執筆者:春野滋(エンタメ&スポーツ愛好家ライター)
公開・最終確認日:2026年9月1日
参照方針:大学、研究機関、国際学会、研究プロジェクト、番組などの公式資料を優先し、確認できた事実と筆者の考察を分けて記載しています。

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